クイックレスポンスの英語学習で「使える英語」を身につける方法


英語学習のプロの意見 : 2

英単語や文法を覚えたものの、実践の場で使おうとするとパッと出てこないということは多いですよね。
日本語では言いたいことが思い浮かぶものの、「英語でなんというんだっけ……」と考えているうちに、英会話に立ち遅れてしまうこともあるかと思います。
そこで、実際に「使える」語彙力を身につけ、英語の瞬発力を身につけるトレーニング法としておすすめしたいのが、「クイックレスポンス」です。
この記事では、クイックレスポンスとはどんなトレーニングなのか、どのようなメリットがあるのか、そして実際にクイックレスポンスを行う際の注意点について解説します。
この記事に登場する英語学習のプロ
クイックレスポンスとは
クイックレスポンスは、聞こえてきた日本語または英語に対して、素早く対応するトレーニング法です。「Quick(素早い)」「Response(対応)」という言葉に由来します。
クイックレスポンスのトレーニング法は学習者のレベルによって変わります。
例えば初心者向けの練習では、「scissors」という英単語が聞こえたら、素早く「はさみ」と答える練習が考えられます。
「はさみ」という日本語の単語が聞こえた時「scissors」と英単語を答えるパターンもあります。
中上級者向けでは、例えば「お会いできてとても嬉しいです。」という文に対して「I’m very pleased to meet you.」などと素早く答えるパターンがあります。
英文に対し、日本語の対訳を答える場合もあります。
また、クイズ形式で、英文に対して英語で即座に答えるケースもあります。
クイックレスポンスの実践方法
クイックレスポンスのトレーニング方法は、それぞれの英語学習レベルにより異なります。
クイックレスポンスのトレーニング法をあらためてレベル別に並べると、以下のようになります。
- 英単語を見て和訳を答える
- 日本語の単語を見て英訳を答える
- 英文を見て和訳を答える
- 日本文を見て英訳を答える
ただ、1と2に難易度の差はあまりないので、初心者の方は並行して行ってもよいでしょう。
また、英語の簡単な質問に英語で答える形式のクイックレスポンスもあります。
これは「3.英文を見て和訳を答える」と同じぐらい、つまり中級者向けのトレーニングといえます。
4は非常に難易度の高いトレーニングなので、中上級以上の学習者向けのトレーニングと考えてよいでしょう。
英単語を見て和訳を答える
初心者の方には、クイックレスポンスを使った単語学習がおすすめです。
まず、市販の単語帳など、英語と日本語の対訳が掲載されている教材を用意しましょう。
次に、英語とその和訳を50セット程度覚えるようにしましょう。英単語を覚える時は、正しい発音とセットで覚えるとより効果的です。
ある程度和訳を覚えたと感じたら、英単語を見て1秒以内に和訳を答えられるようトレーニングを繰り返します。
日本語の単語を見て英訳を答える
英単語を見て和訳を答えられるようになったら、和訳を見て英単語を答えるトレーニングにも挑戦してみましょう。
教材は、英単語を見て和訳する時と同じく、市販の単語帳などでOKです。
英語とその和訳50セット程度を学習し、ある程度頭に入ったと感じたら、和訳を見て1秒以内に英単語が答えられるようトレーニングを繰り返しましょう。
英文を見て和訳を答える
中級レベルの英語学習者の方には、英文を見て素早く和訳を答えるクイックレスポンスのトレーニングがおすすめです。
トレーニングを始めるには、まず対象となる英文のお手本となる音声を聞き、スクリプトを読み、和訳を確認しておきます。
分からない文法事項・語彙があったら、この時点で調べて把握しておきましょう。音声変化や英語のリズムなどの発音ルールも把握しておく必要があります。
大体の英文の内容が把握できたら、スクリプトを見ながら英文を1文ずつ流して、5秒以内に和訳を言えるようにしましょう。
日本文を見て英訳を答える
日本文を見て英訳を答える場合も同じく、まず対象となる英文のお手本の音声を聞き、スクリプトを読み、和訳を確認します。
分からない文法事項・単語や熟語・聞き取れない発音があったら、事前に調べておきましょう。
そして日本文を聞き、5秒以内に英文を発声します。いわゆる「瞬間英作文」に似たトレーニングといえます。
もし、5秒以内にクイックレスポンスができない文が続いたら、音読やシャドーイングを行って基礎体力を高めましょう。
英会話形式でクイックレスポンスを行うことも
英会話教室では、クイズ形式でクイックレスポンスが行われることがあり、独学に応用することもできます。
おすすめ教材の章で紹介する「英語[3秒速答]スーパートレーニング」には、「What day comes after Tuesday?(火曜日の後に来るのは何曜日?)」といった簡単な英語の質問が収録されています。
こういった英語の質問に、即座に答えるクイック・レスポンスのトレーニングもあります。
クイックレスポンスを行うメリット
大学受験やTOEIC対策などで文法・語彙の知識を身につけていても、実践の場で英語表現がとっさに出てこないということも多いですよね。
実際の英会話で英語を使うのに必要なのは、「英語の瞬発力」と「とっさに使える英語表現のストック」です。
クイックレスポンスを行うと、この2つのスキルが養われ、「実際に使える」英会話力が身につきます。
英語の瞬発力が身につく
クイックレスポンスのトレーニングを行う最大のメリットは、英語の瞬発力が身につくことです。
クイックレスポンスのトレーニングでは、聞こえてきた単語や文を、限られた時間で処理する必要があります。
そのため、「文法的に正しいかどうか」「意味的に自然かどうか」などについて考える余地なく、英文を口にしたり、瞬時に和訳したりする「瞬発力」が身につくのです。
その結果、実際の英会話でも「英語で何て言うんだっけ?」と考えるタイムラグなしに、英語が使えるようになります。
「とっさに使える英語表現」のストックが増える
実践の場で英語を使うには、「とっさに使える英語表現」のストックをたくさん揃えておくことも重要です。
「知っている英語表現」=「使える英語表現」とは限りません。
例えば「販売戦略」と言いたい時、普段はその英訳を認識していても、とっさに出てこなくて、「英語で何ていうんだっけ?」と数秒以上考えていては、英会話についていけなくなってしまいます。
また、相手が話をしている時、「our sales strategy」などという言葉が聞こえてきたとして、「”sales strategy”ってなんていう意味だっけ?」としばらく考えていても、その間に会話はどんどん進んでいってしまいます。
意味的につまづいている単語・表現があると、その意味を思い出すことばかり注意が向いてしまうため、それ以降の相手の話を聞くことができず、コミュニケーションが成立しなくなってしまうのです。
このように、英語のコミュニケーションが成立するかどうかは、「実際にその場で口にできる語彙・とっさに理解できる語彙」に左右されます。
クイックレスポンスのトレーニングを行うと、「とっさに使える語彙」が増え、場面や会話のシチュエーションに応じた英語表現を無意識レベルで言えるようになります。
その結果、単なる知識として覚えている英語が、「実際に使える英語」になるのです。
クイックレスポンスを行う際のポイント
クイックレスポンスには、学習者の難易度に応じて様々な形がありますが、特に聞こえてきた日本文を英訳して発声するトレーニングは、非常に難易度の高いものです。
この章では日本語を英訳する際のトレーニングを行う際の注意点について解説しますが、無理をせず自分のレベルに応じたトレーニング法を選択してください。
文法的正しさにこだわらない
日本文を英訳するクイックレスポンスのトレーニングを始める時は、文法的正しさをあまり気にしないスタンスで始めるのがよいでしょう。
「動詞に-sをつけるかどうか」や、「可算動詞か不可算動詞か」などの細かい違いは、最初は無視して、ざっくりした英訳をとにかく口にできるよう心がけましょう。
クイックレスポンスに慣れてきたら、あらためて文法的正しさを意識するようにしてください。
事前に基礎固めを行う
日本文を聞いて英文を発声するクイックレスポンスを行うには、対象となる英文の文法や語彙を把握しておくことが前提となります。さらに、発音ルールの知識も身につけておく必要があります。
そして発音ルールの知識を生かして英文を正しく発音できるようにするためには、音読やシャドーイングなどのトレーニングを行い、英文を口になじませておくとよいでしょう。
クイックレスポンスのトレーニング中も、うまく発声できない文が出てきたら、音読やシャドーイングを行うのがおすすめです。
ただ、ここまで日本文を聞いて英文を発声するクイックレスポンスを中心に注意点を紹介してきましたが、クイックレスポンスは自分のレベルに合わせたトレーニングを選ぶことが重要です。
自分のレベルに合わないトレーニングを続けると、英語学習に挫折する原因になってしまいます。
初心者の方には単語レベルのトレーニングがおすすめです。
中級レベルの方は英文を和訳するトレーニングや英語のクイズに答えるトレーニングを選択しましょう。
日本文を聞いて英語を答えるトレーニングは中上級以上の方におすすめします。
クイックレスポンスのトレーニングにおすすめの教材
この章では、クイックレスポンスのトレーニングにおすすめの教材を紹介します。
この記事でおすすめするのは、以下の8つの教材です。
単語レベルのクイックレスポンス(初心者向け):
- キクタン【Entry】【Basic】
- CDを聞くだけで英単語が覚えられる本
- クイックレスポンス式 数の英語トレーニング
英文を和訳する(中級者向け):
- みるみる英語力がアップする音読パッケージトレーニング
- はじめての英語リピーティング 入門準備編
日本文を英訳する(中上級以上向け):
- クイックレスポンス [5秒]口頭英作文
- 英会話 Quick Response
英語に英語で答える(中級者向け):
- 英語[3秒速答]スーパートレーニング
それぞれの内容について紹介します。
単語レベルのクイックレスポンス(初心者向け)
キクタン【Basic】

「キクタン」は、単語を学習するためのテキストですが、クイックレスポンスのトレーニングにも使えます。
「キクタン」には、「チャンツモード」「フレーズモード」「センテンスモード」の3つのモードがあります。
その中の「チャンツモード」では「英語→日本語→英語→ポーズ」の順で単語が流れるため、英単語を聞いて日本語を答えるクイックレスポンスに最適です。
「キクタン」には【Entry】【Basic】【Advanced】などのレベルが設けられているため、ご自身の学習レベルに合わせてテキストを選ぶとよいでしょう。
また、【Basic】【Advanced】【Super】を網羅したアプリ版「キクタン All-in-One」もおすすめです。
CDを聞くだけで英単語が覚えられる本

「カラー版 CDを聞くだけで英単語が覚えられる本」 | Amazon
「カラー版 CDを聞くだけで英単語が覚えられる本」は、単語を学習するためのテキストですが、クイックレスポンスのトレーニングにも使えます。
左右のスピーカーからそれぞれ日本語と英語が別々に流れるユニークなスタイルの音源のため、イヤホンを左だけで聴いたり、右だけで聞いたりすることで、日本語の単語だけを聞くことも、英単語だけを聞くこともできます。
1冊で日→英と英→日の単語クイックレスポンスができる便利なテキストです。
クイックレスポンス式 数の英語トレーニング

「クイックレスポンス式 数の英語トレーニング」 | Amazon
「クイックレスポンス式 数の英語トレーニング」は、基本のone, two, threeから序数・分数・小数などもカバーしている、「数の英語」に特化したクイックレスポンストレーニング本です。
「547」「1069」など数字が出てきた時に、パッと英語で言えないという人も多いのではないでしょうか。
そんな「数の英語」攻略にもクイックレスポンスのトレーニングは最適です。日本語から英語、英語から日本語と自在に変換できるトレーニングを行います。
数字やグラフの英語はビジネスに必須です。数の英語がぱっと口にできないことに悩んでいる方におすすめの教材です。
英文を和訳する(中級者向け)
みるみる英語力がアップする音読パッケージトレーニング

「みるみる英語力がアップする音読パッケージトレーニング」 | Amazon
「みるみる英語力がアップする音読パッケージトレーニング」は、音読、リピーティング、シャドーイングを対象としたテキストですが、クイックレスポンスのトレーニングにも使いやすいテキストです。
リピーティングのパートでは、英語の文章が流れる時、1文ずつポーズが置かれるので、ポーズの間に素早く英文を発声し、音声を止めて、訳文を見ながら答え合わせができます。
クイックレスポンスが難しいと感じた場合、音読やシャドーイングのトレーニングにもスイッチしやすいテキストです。
はじめての英語リピーティング

「はじめての英語リピーティング」は、リピーティングのためのテキストですが、クイックレスポンスのトレーニングにも便利です。
「みるみるみるみる英語力がアップする音読パッケージトレーニング」と同じく、英語音声で1文1文にポーズが入っているため、クイックレスポンスのトレーニングに最適な学習書です。
日本文を英文に訳す(中上級以上向け)
クイックレスポンス [5秒]口頭英作文
![クイックレスポンス [5秒]口頭英作文](https://res.cloudinary.com/speakbuddy-cloudinary/image/upload/qa-client/payload-images/jxyjtvr8gsuzqr3w9zgl.avif)
「クイックレスポンス [5秒]口頭英作文」 | Amazon
「クイックレスポンス [5秒]口頭英作文」は、日本文を「5秒」で英文に訳すトレーニングを行うトレーニングがメインとなっているテキストです。
日本文を英文に訳すのは、基本的に中上級者向けのトレーニングですが、このテキストでは、レベルAからレベルDまで4段階の難易度が設けられています。
レベルAでは「これは冷たいです。」を「This is cold.」と訳したり、「あなたはウェイターですか?」を「Are you a waiter?」と訳すなど、初心者にも取り組みやすい内容となっています。
また、英文が文法項目ごとに分かれているため、クイックレスポンスのトレーニングをしながら文法事項も学ぶことができ、効率的に英語学習を進めることができます。
英会話 Quick Response

「英会話 Quick Response」は、ビジネスシーンで使える英語表現をまとめた本で、Part 1:Quick Response と Part 2:Role-Playingで構成されています。
Part 1ではまず日本語→英語の順に音声が流れるので、音読の練習をすることができます。
その後、日本語音声→ポーズ→英語音声の順で流れる音声が収録されているので、クイックレスポンスで素早く日本文を英文に変換しましょう。
もし、クイックレスポンスがうまく出来なかったら、音読のパートを繰り返すとよいでしょう。
Part 2:Role-Playingではクイックレスポンスのトレーニングは行いませんが、ビジネスで役立つ表現がたくさん盛り込まれているので、併せて利用することをおすすめします。
英語に英語で答える(中級者向け):
英語[3秒速答]スーパートレーニング
![英語[3秒速答]スーパートレーニング](https://res.cloudinary.com/speakbuddy-cloudinary/image/upload/qa-client/payload-images/pfnoy1yntehb1egufzwb.avif)
「英語[3秒速答]スーパートレーニング」は、主に英語の質問に英語で答えるクイックレスポンスのトレーニングが行えるテキストです。
このテキストは、「暗算レスポンス」「クイズレスポンス」「文法レスポンス」の3つのパートで構成されています。
「暗算レスポンス」のパートでは、「4 plus 2 is…?」など一桁の計算から始まり、足し算・引き算・かけ算・わり算を英語でテンポよく行うことで、英語脳の育成を促します。
「クイズレスポンス」のパートでは、「Is iron a kind of metal?(鉄は金属の一種ですか?)」「Isn’t Chicago in Canada?」などの簡単な質問に英語で答えます。
「文法レスポンス」のパートでは、質問は一部日本語で行われ、「She was busy all day.を否定文に」などという変換練習を理屈抜きに行うことで、英語の瞬発力を鍛えます。
「英語の質問に対し英語で答える」「英語を英語に変換する」トレーニングを通して、英語の瞬発力を養うことができる教材です。
まとめ
クイックレスポンスは、英語または日本語を聞いて素早く翻訳したり、英語に英語で答えたりするトレーニングでした。
具体的には、以下のようなトレーニングが挙げられます。
- 英単語を見て和訳を答える
- 日本語の単語を見て英訳を答える
- 英文を見て和訳を答える
- 日本文を見て英訳を答える
- 英語の質問に英語で答える
クイックレスポンスは、特に「単語や文法の知識はあるけれど、いざ外国人を目の前にすると言葉が出てこない・理解できない」という方におすすめです。
英語を実際に使えるようにするには、「英語の瞬発力」と「使える英語表現のストック」が不可欠だからです。
以下のQ&Aを参考にしてください。

Yuuコーチ
即興で日本語を英語に訳す訓練を積むことと、会話で使えるキーフレーズをストックしておくことが重要なようですね。
ただ、クイックレスポンス、特に日本語を英語に訳すトレーニングは、効果が高い半面、かなり難易度の高いトレーニングでもあります。
クイックレスポンスのトレーニングを行う場合は、ご自身の学習レベルに応じたスタイルを選択し、無理のないよう進めてください。
「英文がとっさに口から出ない」事に悩んでいる方には、クイックレスポンスだけでなく、とにかく「英語を口にする」トレーニングがおすすめです。Chihoコーチの意見を参考にしてみてください。

Chihoコーチ
「とにかくどんな形でもいいので、口から英語を出す」のが大事ということですね。
クイックレスポンスが難しいようであれば、対象の文をシャドーイングしても構いませんし、シャドーイングも難しいようであれば、音読してもよいでしょう。
ただ、クイックレスポンスのメリットは、素早い応答を行うことによって、理屈で考える余地をなくし、英語の瞬発力を身につけることができるところです。
クイックレスポンスのトレーニングを行うことによって、「英語の知識」が「実践の場で使える英語」へと変わっていきます。
英語の瞬発力を身につけたい方は、ぜひクイックレスポンスを英語学習に取り入れてみてください。
執筆者=なっつるん