リテンションって何?短期記憶を鍛えるメリットとトレーニング法
英語学習のプロの意見 : 3
TOEICなどのテストで、英語音声の内容自体は分かるのに、解答まで内容を覚えていられなくて、スコアが伸び悩んでいませんか?
また、英会話で相手の話が長くなると、内容を最後まで覚えていられないという方も多いのではないでしょうか。
もしかしたらその悩みは、「リテンション」のトレーニングを通して解消できるかもしれません。
この記事では、短期記憶力と同時にリスニング力とスピーキング力をアップさせる「リテンション」のトレーニングについて解説します。
テストでリスニングのスコアが伸び悩んでいる方、リスニング力をアップさせたい方に特におすすめの記事です。
この記事に登場する英語学習のプロ
Harue
【英語ある生活で子どもと大人の未来を拓くDAAグローバル子育てコーチ】子どもの興味関心、発達段階、個性、脳の特性を活かした英語習得法、またその土台となる親子の心育てについて研究し、おうちの方向けに発信している。大手英会話学校講師時代には、幼児から大人クラス、プライベートレッスン、資格試験クラス、セミナーなど幅広く担当し、国内自動車メーカーで社外講師としての経験もあり。大人の英語学習においては、個々の興味関心を活かした英語学習のコーチングが得意。一児の母であり、自身の子供にも、ツールとして運用ができる英語力が身に付いていくよう、好奇心や発達段階、思考力・想像力の基盤である母語も大切にしながら、無理なく自然に英語に触れさせている。
Harunaコーチ
アメリカの大学で教育学部修士課程を修了。アメリカの保育園と小学校での勤務経験あり。現在は、日本で英会話講師と英語コーチをしている。英検®1級、TOEIC®990点取得。子育て中で、バイリンガル育児に奮闘中。
ERI
大学卒業後、大手電子部品メーカーの営業職として勤務。英語の必要性を感じ社会人になってから英語学習をリスタート。仕事、子育てと両立しながらもTOEIC®︎400点から900点台へ独学でスコアアップ。英語講師を経て現在は英語コーチ5年目。得意分野は初心者さん向け、大人のやり直し英語とTOEIC®︎対策。10代から60代まで160人以上の幅広い学習者さんのサポート。TCS認定コーチとしてライフコーチングも提供中。公式HPブログでは、仕事や子育てなどで忙しい大人世代が、ご機嫌に英語学習を続けていくための気持ちの整え方、ちょっとしたコツを発信中。
リテンションとは
リテンションという言葉、あるいはトレーニング内容について初めて聞いた方や、あまり知らない方も多いかもしれません。
あるいは「リピーティング」や「リプロダクション」とごっちゃになっている方もいるかと思います。
この章では、リテンションについて簡単に説明し、リピーティングやリプロダクションとの違いについて解説します。
リテンションについて
リテンションとは、「保持すること」を意味する「retention」という英単語に由来する言葉で、「聞き取った英語音声を短期的に記憶に留めること」を指します。
英語のリスニングでは、聞き取った内容を理解するスキルだけでなく、聞き取った内容を利用するまでの一定時間、記憶にとどめておくスキルも必要になります。
例えば、TOEICのリスニングテストでは、数分の英語音声を聞いた後、その英語音声がどんな内容だったか覚えておかないと、回答ができませんよね。
聞き取った内容を一時的に記憶に保持しておくスキル、それが「リテンション」で、リテンションはリスニングスキルの一部ともいえます。
リテンションのスキルをトレーニングするには、短い英文を聴き、瞬間的に暗記して、何も見ずに声に出して発声する作業を繰り返すことになります。
英語学習のトレーニングとしての難易度はやや高く、中級以上のレベルの学習者向けといえます。
リテンションとリピーティングとの違い
リテンションのトレーニングとよく似たトレーニングに、「リピーティング」があります。
リテンションの具体的なやり方は後のセクションで解説しますが、英文を1文聞き取って、「何も見ずに」その英文をそのまま再現するのが「リテンション」です。
それに対してリピーティングは、英文を1文聞き取って、その英文を「スクリプトを見ながら」繰り返すトレーニングのことをいいます。
リテンションの場合、聞き取った英文を一時的に記憶の中に保持する必要があり、リピーティングより格段に難易度が高いといえます。
リテンションとリプロダクションとの違い
「文・文章を聴いて、何も見ずに再現する」トレーニングとして、「リプロダクション」というトレーニングもあります。
「リテンション」と「リプロダクション」の違いは、英単語の意味からイメージするとよいでしょう。
リテンションは、「retention(保持すること)」という単語の意味の通り、聴いた文をそのまま記憶にとどめておくトレーニングです。
リプロダクションは「re-production(再び生み出すこと)」という単語の意味から連想できるように、「聴いた文章を自分なりにまとめ直して発声する」トレーニングのことをいいます。
つまり、リテンションが「文の内容を変えずに保持し、そのまま再現する」トレーニングであるのに対し、リプロダクションは「ある程度長さのある文章を、要約して分かりやすく伝える」トレーニングなのです。
リテンショントレーニングを行うメリット
リテンションのトレーニングを行うことで、以下のような効果が期待できます。
- リスニング力がアップする
- スピーキング力がアップする
リテンションはリスニングスキルの一部なので、リテンショントレーニングを行うことで、リスニング力がアップします。
そしてリテンショントレーニングでは、聞き取った音声を口に出して発声する機会が多くあるため、スピーキング力アップにもつながります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
リスニング力がアップする
リテンションのスキルを鍛えることで、英文に対する記憶力が高まり、記憶を維持できる時間も長くなります。
英語のリスニングテストでは、数分程度の会話、アナウンス、インタビューなどを聴いて設問に答える形式の問題も多いですよね。
長文を聴いてから設問に回答するには、英文を少しの間記憶にとどめておく記憶力も重要になります。
そういった意味で、リテンションもリスニング力の一部といえるため、リテンショントレーニングはリスニング力アップにつながるといえます。
さらに、英語をリスニングする際は、集中力が必要になります。
リテンションのトレーニングを行う際には、高い集中力で英文を聞き取ることが多くなるため、リスニングに対する集中力も増します。
リテンショントレーニングは、リスニング力を総合的にアップさせることができるのです。
スピーキング力がアップする
リテンションのトレーニングでは、聞き取った文章をひたすら口に出して再現していくことが必要になります。
つまり、絶え間ないアウトプットを繰り返すことになるので、スピーキングのトレーニングをしていることにもなります。
リテンショントレーニングを行うことで、リスニング力だけではなくスピーキング力もアップし、英会話力全体の底上げになるのです。
リテンションの具体的なトレーニング方法
それでは、リテンショントレーニングの具体的な手順を見ていきましょう。
リテンショントレーニングの基本的な手順は以下の通りになります。
- テキストは見ないで、英語を1文聴く
- 音声を止める
- 何も見ないでその文を再現する
- テキストを見て、合っているかチェック
- 間違っていたら、テキストを見ながら言い直す
- 次の文に移る
まずは、英語を1文聴いて、音声を止めます。
1文ごとにリピーティング用のポーズが設けられている音声教材の場合も、最初は1文ずつ止めてトレーニングを行うことをおすすめします。
そして文をそのまま再現して発声しましょう。
発声が終わったら、スクリプト(書き下し文)を見て、発声した文がお手本と合っていたか確認します。
合っていた場合は次の文に移り、間違っていた場合は、スクリプトを見ながらもう一度言い直しましょう。
名詞・動詞・形容詞などの大まかな部分だけでなく、冠詞や前置詞など文法をサポートする部分もしっかり再現できていることが重要です。
もし、分からない語いや文法事項があれば、リテンションのトレーニングを一旦ストップして、しっかりカバーしておくようにしましょう。
また、リテンションのトレーニングに臨む際は、音声変化などの英語の発音ルールを把握しておくとスムーズです。次の章で解説します。
リテンションを効果的に行うコツ
リテンションのトレーニングを効果的に行うためには、ただトレーニングを繰り返すだけではなく、「なぜ記憶をとどめておけないのか」理由を洗い出して、改善することも大事です。
うまく英文を記憶にとどめておけない理由としては、以下のようなものが考えられます。
- 単語・文法の知識不足
- 発音ルールの知識不足
- 聞き取った内容を一度日本語に変換するくせがある
- リスニングに集中しすぎてしまい、処理内容が多すぎて記憶に残らない
詳しく見ていきましょう。
単語・文法の知識不足
まずは、そもそも単語・文法の知識が足りているか、もう1度確認してみてください。
Harue
リスニング力アップの第一歩として、「発音できる単語を増やしていく」ことが重要だというお話でした。
そのため、単語・フレーズを覚える際は、かならず正しい発音をセットで覚えるようにしてください。
発音ルールの知識不足
リテンショントレーニングを行うにあたっては、音声変化などの発音ルールについても、把握しておいた方がよいでしょう。
Harunaコーチ
Harunaコーチの指摘にもあるように、英語の音声変化には主に連結・同化・ら行化・脱落・弱形の5種類があります。
これらのルールについてあらかじめ把握しておくことで、リテンションのトレーニングを効果的に進めることができます。
一度日本語に変換する癖がある
英語を1度日本語に変換して把握するくせがある状態、つまり「英語脳」が形成できていない状態だと、リテンションがうまく進められない可能性があります。
リテンションのトレーニングを行うには、英語の単語・文法の知識、音声変化などの発音ルールの知識、そしてある程度の英語力が前提となります。
もし、リテンションがうまくいかないと感じたら、リテンションのトレーニングを一度ストップするか、多読・多聴など英語脳を育成する他のトレーニングを複合的に行うことをおすすめします。
細部まで聞き取ることに集中しすぎている
最後に、聴いた内容が記憶に残らない原因として、リスニングした内容を理解することに集中しすぎてしまい、処理が遅れてしまうということが考えられます。
ERI
英語のリスニングテストに臨む時、またリテンションをトレーニングする時は、意味的に重要性の薄い助動詞や前置詞などに注意を向けすぎないようにしましょう。
リテンションにおすすめの教材3選
リテンションのスキルをトレーニングするにあたって、教材選びの時留意したいのが、「1文が長すぎず短すぎないこと」「簡単すぎず難しすぎないこと」です。
また、リテンションのトレーニングは、1文1文英語音声を止めながら行うので、1文ごとにポーズが置かれている教材なら、非常にスムーズにトレーニングを進めることができます。
この記事でおすすめするリテンショントレーニングの教材は以下の3つです。
- みるみる英語力がアップする音読パッケージトレーニング
- はじめての英語リピーティング 入門準備編
- TOEIC L&R TEST 初心者特急 パート1・2
それぞれ見ていきましょう。
みるみる英語力がアップする音読パッケージトレーニング
「みるみる英語力がアップする音読パッケージトレーニング」| Amazon
「みるみる英語力がアップする音読パッケージトレーニング」は、音読、リピーティング、シャドーイングのトレーニングが網羅された英語学習教材です。
この教材でいう「リピーティング」には、「テキストを見ながら行うリピーティング」と、「テキストを見ないで行うリピーティング(=リテンション)」が含まれています。
テキストを見ないで行うリピーティング、すなわちリテンション用に、1文1文にポーズが入っている英語音声も収録されているため、リテンションのトレーニングに非常に適した教材です。
はじめての英語リピーティング 入門準備編
「初めての英語リピーティング 入門準備編」は、リテンショントレーニングに不安を抱えている初心者の方に特におすすめの教材です。
1日20分・4週間のトレーニングで構成されており、最初は「I brush my teeth.」「I wake up again.」など簡単なフレーズからトレーニングが始まります。
英語音声の後には発声のためのポーズが設けられており、リテンションのトレーニングにぴったりです。
「初めての英語リピーティング」シリーズの「入門準備編」は「表現練習編」に続くので、「入門準備編」に慣れてきたら、次巻に進むのもよいでしょう。
TOEIC L&R TEST 初心者特急 パート1・2
「TOEIC L&R TEST 初心者特急 パート1・2」| Amazon
リテンションのトレーニングには、1文1文が「長すぎず短すぎない」「簡単すぎず難しすぎない」文で構成されている英語音声が必要です。
「簡単すぎず難しすぎない」音声教材として、初めてリピーティングに取り組む人におすすめなのが「TOEIC L&R TEST 初心者特急 パート1・2」です。
TOEICのリスニングスコアが伸び悩んでいて、あらためてご自身のリスニングスキルを見直したい方にもおすすめです。
また、TOEICはビジネス分野を幅広く扱っているため、ビジネスパーソンにもおすすめの教材といえます。
まとめ
リテンションとは、「英語で聴いた内容を一定期間記憶にとどめておくこと」でした。
英語をリスニングするには、聴いた内容を理解するだけでなく、聴いた内容を少しの間覚えておく必要があります。
つまり、リテンションはリスニングスキルの一部といえます。
リテンションのトレーニングでは、英語を1文聞いたら英語音声を止めて、正確に再現する作業を繰り返します。
リテンショントレーニングの下準備として、単語・文法の基礎的な知識と、音声変化などの発音ルールを把握しておくのも重要です。
TOEICなどのリスニングテストで、英語音声の内容は理解できるのに、リスニングセクションのスコアが伸び悩んでいる方は、リテンションを苦手としている可能性があります。
この機会に、リテンションのトレーニングを検討してはいかがでしょうか。
執筆者=なっつるん