フォニックスは意味ない?英語の発音とリスニング力がアップする方法

英語学習のプロの意見 : 1

フォニックスは、英語の文字と音の関連性を学ぶ学習法です。英語の正しい発音やリスニング力を身につけるのに非常に効果的な学習法として知られています。
英語のプロもフォニックスの重要性を強調しています。

Janickiコーチ
フォニックスには「発音の基礎のすべて」が詰まっているとのことでした。
その一方で、「フォニックスを学んでも意味ない」という人がいるのはなぜなのでしょう。
この記事では、フォニックスのメリットを再確認した上で、フォニックスが「意味ない」といわれてしまう理由について分析します。
フォニックスとは
フォニックスとは、英語の「発音」と「文字(アルファベット)」を結びつけるルールのことです。
英語圏の子どもたちは、「英語の読み書きの勉強」として、最初にフォニックスを習います。
例えば、フォニックスでは、「A(a)」という文字を「エー」と読むのではなく、「/æ/(ェア)」と読みます。
「B(b)」は /b/(ブ)」、「C(c)」は「 /k/(ク)」……というように、アルファベット26文字とその音を結び付けて認識し、発音できるようトレーニングするのです。
アルファベットの発音を先に学んでおくことで、知らない英単語に出会っても正しく読めたり、耳にした言葉のスペルが予測できたりするという効果があります。
例えば「hat」という単語に新しく出会った時にも、「/h/」と「 /æ/」「 /t/」の組み合わせで単語の発音を推測することができるのです。
フォニックスの一覧表は、以下のようになります。
- A:/æ/
- B:/b/
- C:/k/
- D:/d/
- E:/e/
- F:/f/
- G:/g/
- H:/h/
- I:/ɪ/
- J:/dʒ/
- K:/k/
- L:/l/
- M:/m/
- N:/n/
- O:/o/
- P:/p/
- Q:/k/
- R:/r/
- S:/s/
- T:/t/
- U:/u/
- V:/v/
- W:/w/
- X:/ks/
- Y:/y/
- Z:/z/
フォニックスを学ぶメリット
「学んでも意味ない」といわれることもあるフォニックスですが、実はフォニックスを習得することには様々なメリットがあります。
フォニックスを学ぶことで得られるメリットは、主に以下の3つです。
- 知らない単語の発音を推測できるようになる
- リスニング力がアップする
- カタカナ英語から脱却できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
知らない単語の発音を推測できるようになる
フォニックスは、いわば英語の発音のルールです。発音のルールが分かれば、単語を見ただけで、おおよその発音の見当がつくようになります。
単語を見ただけで単語の音を推測できるようになれば、多読の際に文章をすらすら読み進められるでしょう。
また、フォニックスを身につけると、耳で聞いただけの英単語のスペルを推測できるようになります。
耳で聞いただけの英単語のスペルを推測できるようになれば、リスニング練習として多聴を行う際の効率が上がるでしょう。
多読、多聴の効率が上がれば、英語力を総合的に底上げすることも可能といえます。
リスニング力がアップする
フォニックスを学ぶことで、アルファベット1文字1文字の正しい音を身につけることができます。
その結果、基礎的なリスニング力をアップさせることができるのです。
日本人にとって区別が難しいとされる「L」と「R」や「B」と「V」も、フォニックスを通して正しい発音を学ぶことで、自然と聞き分けができるようになります。
カタカナ英語から脱却できる
フォニックスを学ぶと、カタカナを介さずに英単語の音が理解できるようになります。
例えば、カタカナ英語では「cat」という単語を「キャット」と読んでしまいますが、ネイティブにこの発音は通じません。
一方、フォニックスでは、「c」は /k/ 、「a」は /æ/ 、「t」は /t/ と教わるので、「cat」は/kæt/ と、ネイティブにも通じる発音で認識することができます。
フォニックスが「意味ない」といわれてしまう理由
前の章では、フォニックスを学ぶことで、正しい英語の発音や基礎的なリスニング力を身につけることができ、英語力を総合的にアップさせることができると解説しました。
しかし、「フォニックスを学んでも意味ない」という意見があるのはなぜなのでしょう。
この章では、フォニックスが「意味ない」といわれる理由を探っていきます。
例外語(サイトワード)に対応できないから
フォニックスの最大のネックは、フォニックスが当てはまらない単語(サイトワード)が多数存在することといえます。
サイトワード(Sight word)とは、文字通り「ルールではなく見た目で覚えるしかない単語」のことです。
例えば、「there」や「chair」といった単語は、フォニックスのルールには当てはまりません。
サイトワードは数も多く、使用頻度の高い単語が多いため、サイトワードを無視して英語学習を進めることはできません。
そのため、フォニックスとよく比較される勉強方法として、「ホール・ランゲージ(Whole Language)」という学習法があります。
フォニックスのように1つ1つ音を学ぶのではなく、単語全体と読み方をマッチさせていく学習法です。
ホール・ランゲージを推奨する人たちの中には、「フォニックスなんて意味ない」という人もいます。
ただ、実際問題としては、英語圏の子どもたちはフォニックスを学びながらサイトワードも併せて学んでいるようです。
サイトワードの存在は無視できませんが、だからといって「フォニックスなんて意味ない」ということにはならないということです。
カタカナを使って学習してしまうケースが多いから
フォニックスを学んで「意味なかった」「効果が実感できなかった」といっている人は、フォニックスを学ぶ時にカタカナを利用していたのかもしれません。
フォニックスは、独学で学んでも十分効果が期待できる学習法ですが、自己流でカタカナを使って学習を進めてしまうと、フォニックスの効果は実感できません。
フォニックスを学ぶとネイティブにも通用する発音が身につくと紹介しましたが、カタカナを使ってフォニックスを学ぶと、カタカナ英語に近いものしか身につきません。
この記事でも便宜上一部カタカナ表記を用いていますが、フォニックスを学ぶ際は、カタカナの影響を受けないよう注意する必要があります。
ネイティブやネイティブに近い人の発音を参考にして、聞こえた音を一度カタカナに置き換えるのではなく、聞こえたまま発音することが大切です。
フォニックスを身につけてもすぐに英語が話せるようにはならないから
フォニックスを学んでも「意味がなかった」といっている人たちは、フォニックスに期待しすぎていたのかもしれません。
フォニックスは、いわば英語の発音のルールです。
そのため、英語学習を大いに助けることにはなりますが、フォニックスを習得しただけで英語が話せるようにはなりません。
英語が話せるようになるには、サイトワード(フォニックスに当てはまらない単語)を学ぶ必要がありますし、単語の意味・文法なども学ぶ必要があります。
フォニックスを学んでも、それだけでは英語がペラペラ話せるようになるわけではないのです。
ただ、フォニックスを学ぶことでネイティブに近い美しい発音を手に入れることができますし、リスニング力もアップするので、英語学習の入口としてフォニックスはとてもおすすめです。
フォニックスのおすすめ学習法
フォニックスを大人が独学で勉強する際は、テキストを使ったり、YouTubeの動画を利用したり、アプリを利用する方法が考えられます。
また、英語の発音を矯正したい場合は、プロのコーチにマンツーマンで教えてもらうのが最も効率がよいといえます。
大人はカタカナの読み書きができてしまうので、独学で学ぶ際は、自己流でカタカナを使って学習を進めないように注意しましょう。
必ずお手本となる英語音声を利用し、カタカナに置き換えず、聞こえたままに発音することが重要です。
この章では、大人がフォニックスを学ぶ際におすすめの教材を厳選して紹介します。
英語学習本
フォニックスを扱った英語学習本は、子ども向けのものが多いですが、あまりに子どもっぽい本だと、大人はむしろ学びづらいですよね。
ここでは、大人がスムーズにフォニックスを学ぶことができる英語学習本を紹介します。
あいうえおフォニックス

「あいうえおフォニックス」には、1巻「英語の母音をひらがな5つで完全攻略!」と2巻「英語の[子音]編 日本人が苦手な発音を徹底攻略!」があります。
1巻では、いわゆる1文字対1音の典型的なフォニックスとは異なり、「明るい『あ』a」「暗い『あ』u o oo ou」「『えぁ』air are」など、「あいうえお」の5文字を使って英語の母音を網羅的に解説しています。
イラストや分かりやすい説明が多く盛り込まれているので、英語の発音をしっかり学びたい初心者の方にぴったりです。
テキストに音声は付属していませんが、YouTubeチャンネル「『あいうえおフォニックス』英語発音」で対応する音声が公開されています。
フォニックス英語リスニング

「フォニックス英語リスニング 文字と音のルール“フォニックス"で 聞こえた英語の音を瞬時に文字変換する (音声DL付)」| Amazon
フォニックスのテキストは子ども向けが多いですが、「フォニックス英語リスニング 文字と音のルール“フォニックス"で 聞こえた英語の音を瞬時に文字変換する (音声DL付)」は、完全に大人の学び直し向けのテキストです。
アルファベット1文字の大して1音を教えるフォニックスだけではなく、「th /θ/・/ð/」や「sh /ʃ/」などの発音にも対応しています。
/æ/ について「『エ』と『ア』の中間の音ですが、『ア』の方が強く響きます」などと、大人に分かりやすく解説されています。
子ども向けのテキストでフォニックスを学ぶのに抵抗のある人におすすめです。
YouTube動画
フォニックスを扱ったYouTube動画は子ども向けのものが多いですが、大人をターゲットとした動画も配信されています。
ここでは、大人がフォニックスをスムーズに学ぶことができるおすすめの動画を紹介します。
『あいうえおフォニックス』英語発音
YouTubeチャンネル「『あいうえおフォニックス』英語発音」は基本的に子ども向けの動画を配信していますが、「大人のフォニックス」という大人向けのシリーズも提供しています。
英語の発音について理屈で分かりやすく説明しているので、大人ならではの理解力を利用して英語の発音を学ぶことができます。
NextepちぐさのYouTube英会話教室
以下の動画では、AからZまでのフォニックスの発音の仕方を、日本人バイリンガル講師が分かりやすく教えています。
お手本となる音声だけでなく、発音のコツも分かりやすくまとめられているので、独学で初めてフォニックスを学ぶ方にとてもおすすめの動画です。
Yumi's English Boot Camp
以下の動画では、「フォニックスとは何か」から「この音だけ最低限押さえておけば大丈夫」という英語の音素を発音記号をもとに分かりやすく教えています。
「低く短い /ʌ/ 」や「べシャッとした /æ/」など、理屈と感覚を交えて分かりやすく説明されているので、フォニックスを総合的に学びたい方におすすめです。
英語学習アプリ
フォニックスを学習できるアプリは、基本的に子ども向けですが、あまりに子どもっぽいと、大人は学ぶ意欲が失せてしまいがちですよね。
ここでは、大人でもスムーズにフォニックスを学ぶことができるアプリを紹介します。
ABC Magic Phonics

・画像引用:App Store
ABC Magic Phonicsは、アルファベット1文字と1つの音の関係を分かりやすく学ぶことができるため、フォニックスを始めて学ぶ方におすすめのアプリです。
子ども向けアプリではありますが、/æ/ の段階で「ambulance(救急車)」や「astronaut(宇宙飛行士)」など難易度高めの単語も扱われており、大人も十分勉強になるアプリかと思います。
Phonics Genius

・画像引用:App Store
Phonics Geniusは買い切り100円の有料アプリですが、100円を払う価値は十分にあります。
こちらも英語ネイティブの子ども向けに作られたアプリですが、黒を基調とした大人っぽい外観で、扱われている単語のレベルも高めなので、大人にも十分手ごたえを感じるアプリです。
発音矯正英語コーチングサービス
ここまでは、フォニックスを独学で学ぶ方法を紹介してきました。
ただ、英語の発音をより効率的に学びたい方には、発音のプロにマンツーマンで指導を受けるのもおすすめです。
以下のQ&Aも参考にしてください。

竹村 和浩
英語の正しい発音をマスターするには、発音記号(音素)を口の中の「どの位置で」「どういった調音方法で」発音するか身につける必要があるということですね。
英語の発音の際の口の中の舌や筋肉の動きなどは、お手本の音声をまねるだけでは習得が難しいかもしれません。
もし、独学でフォニックスを身につけるのが難しいと感じたら、プロの第三者の手を借りることも視野に入れることをおすすめします。
ハミングバード

・画像引用:株式会社リンクアカデミー
ハミングバードは、ロゼッタストーン・ラーニングセンターが提供する英語「発音矯正」専門英会話スクールです。
英語の発音をマスターするには、英語の母音・子音の音を正しく発音する必要があります。
ハミングバードでは、英語の母音・子音を「8 Positions」と呼ばれる8つの口の形・舌の位置の組み合わせで表現しています。
日本人による、日本人のための発音矯正メソッドで、ネイティブのようなきれいな発音を身につけることができる、英語コーチングサービスです。
ハツオン

・画像引用:MeRISE株式会社
ハツオンは、10,000人以上の受講生に英語を教えてきたMeRISE株式会社が提供する、発音専門の発音特化型英語コーチングサービスです。
10年間以上蓄積された受講生のデータと、日本人の発音の特徴を分析し、「最も効率的にネイティブに近づけるパターン」を追求した短期集中プログラムを開発したとのこと。
誰もが発音の変化を実感する「圧倒的な変化体験」を約束しています。
トライズ 発音クリニック

・画像引用:トライズ株式会社
トライズ発音クリニックは、3ヶ月で「ネイティブと戦える発音」を目指す発音矯正英語コーチングサービスです。
PDCAサイクル(Plan・Do・Check・Adjust)に沿った効率的な学習プランで、ネイティブと対等に渡り合える発音の習得をサポートします。
まとめ
フォニックスは、英語の音1音1音と、アルファベット1文字1文字を結び付ける、いわば英語の発音のルールです。
英語の個々の音を正確に把握することができるため、カタカナ英語を改善し、基礎的なリスニング力をアップさせることができます。
ただ、フォニックスに当てはまらない単語(サイトワード)に対応できないという弱点があるため、フォニックスとサイトワードを合わせて学ぶことをおすすめします。
また、フォニックスを学んだだけで英語がペラペラになるわけではないので、単語・文法などもしっかり勉強しましょう。
そしてフォニックスを学ぶ時は、必ずネイティブやネイティブに近い人の音声をお手本にして、カタカナを介さずに、聞こえたままの音を発音するよう心がけましょう。
フォニックスを扱った教材は子ども向けのものが多いですが、大人も手ごたえを感じられるものも多いです。
また、お子さんのいる方はお子さんと一緒にフォニックスを学んで、楽しく英語の基礎体力作りをしてはいかがでしょうか。
執筆者=なっつるん